記号的要素の調合がキャラクターを作り出す。
『ボクのセカイをまもるヒト』感想 (その3 ただし少しだけ)
【津門綾羽紬《妖精》】
黒髪(正確には濃赤紫)ロング・かなり強気系・戦闘的・「電波な(=主人公が理解できない)ワード」
【猫子《科学者》】
自称「妹」の人型爆弾(主人公から5メートル離れると半径30kmもろとも自爆)・能天気なキャラ・チビっ子
【姉 津波】
唯我独尊・傍若無人・担任教師・《セカイ》について何かを知っている?(傍観者?)
【媛《剣精(メイ)》】
自信家・単純・身の丈と精神年齢のバランスの悪い強気系
【すみれ台《剣精(メイ)》】
メイド・巨乳・メガネ・片ポニー
【香炉《魔術師》】
無表情・チビっ子・ぬいぐるみ
【先生《魔術師》】
自殺願望・無気力
(参照)
“割とゲームとかで出てくるキャラクターのライブラリから基礎設定を構築した所も見受けますが”
『ボクのセカイをまもるヒト』感想(11/18付)
“その記号的キャラが分かりやすい萌えになってるので、パッと見は「イージス5」の雰囲気に近い”
Snowly Summer:月臣なおきさん12/7付より
※先日の月臣さんの感想への反応の中で触れたかったけど(眠気の限界で思考が周らず)残していた部分は、「キャラの記号的構築」です。
上に『ボクのセカイを』で出てくるキャラクターの特徴をだいたい羅列してみましたが、そこを見ていただくと、幾つかを除いて(!)この1年にプレイしたエロゲや読んだコミック、小説、もしくはアニメの中で見た事のあるような特徴を見出す筈です。
自殺願望キャラというと筒井康隆先生の『自殺志願』を思い出すし、ちびッ子で無表情微反応なのや逆に能天気なのは必ず一人はいます。強気系は今年『つよきす』といった作品や『処女はお姉さまに恋してる』の厳島貴子などで注目の集まった「ツンデレ」で一躍注目されたタイプですが、既に10年前には『同級生』の田中美沙などが存在してます。
タイプによっては更に遡る可能性もあるけど、キャラクターを構築する上での記号要素のライブラリは過去に大きく依存してます。
例えば『ToHeart』のマルチのようなロボットでさえ、ルーツ的には『鉄腕アトム』の妹・ウランや更に古典的な映画に登場した女性型ロボットがあるから、あくまでもその時にクローズアップされたキャラクターに過ぎません (突然クローズアップされたが故に新しいキャラクタータイプという印象が強まります)。
余り詳しくは無いんですが(汗)、古典から最近までのロボットヒロインをかなり大まかに記号化してみました。サンプルは記憶にあるのと部屋にあるコミックやVFBなどを参照したので代表格だというわけでも(汗)。
『R.U.R』の労働をする機械 1920年
ロボット
『メトロポリス』の金色女性型ロボット 1920年代
ロボット・女性
『鉄腕アトム』のウラン 1960年
ロボット・女性・子供・妹・明るく元気
『ブレードランナー』のレプリカント 映画は1983年
ロボット・女性
『ToHeart』のマルチ 1997年
ロボット・女性・ちびッ子・明るく元気・ドジ・純真無垢・学園生徒
『平成イリュージョン』のマンダ発動機 R-NAVI VI 1999年
ロボット・女性・家政婦・遠隔操作(人間が操縦)
『D.C. ダ・カーポ』の天枷美春 2002年
ロボット・女性・下級生・明るく元気・わんこ・純真無垢(無知)・学園生徒・本物の身代わり
『諸葛瑾』のメカ進藤
ロボット・女性・本物の身代わり・ガクガクブルブル・ドリル・小型
『月は東に日は西に』の野々原 結先生 2003年
ロボット・女性・ちびッ子・明るく元気・ドジ・先生・プリン・実はロボットだと暗示かけていた(ホントは人間でした)
もしかするとウランの場合はもう少し記号的な要素を持つかもしれませんが、手許には『プルートゥ』1巻初回版の『地上最大のロボット』しかないので、その中での印象から抽出してます。明るく元気という部分は少し「子供のような強気さ」な部分もあるかも。
ともかく、それぞれに新しい要素が追加されてはいますけど、唯一そこで自然発生したような記号は皆無ですね。
一見斬新だと思われる「本物の身代わり」にしても、『沈黙の艦隊』のシーウルフ級2隻など複数の同質のもの(双子とか)を使ったトリックが先に存在しています。
「実はロボットだと暗示かけていた」というのは……ちょっと先例知らないので、もしかすると……。
結局の所、記号的な要素は個々は新鮮味が無い要素という訳なのですが、それを突然変異のごとく斬新な印象を与えるカタチとするのは「組合せ」です。
つまり創作者は、記号的な要素の調合によって新鮮味を感じるキャラクターを構築しているという事。また場合によっては、敢えて記号的な要素を (全般的もしくはピンポイント的にユーザーの嗜好に合うような)人気の出ているタイプを元にアレンジを加えて調合する場合もあります。
まあ、この事自体は既に常識だと思うんですけどね。というかかなり今更な考察だと……(考察にもならない)。
『ボクのセカイを』について、個人的には『学校』シリーズほどではないにしても、『電撃イージスV』や『絶望系』と比較すると面白くて続きの気になるシリーズだとした第3のポイント (第1・2は前回)は、ピンポイント的にウチの嗜好に合うような記号要素で調合されていた羽紬というキャラクターの存在です(苦笑)。
完全無欠、真面目世間(《無属》セカイの社会)知らず、そしてかなり強気で融通の利かない、そんな羽紬から時々こぼれ出す弱さとか可愛さを目にするだけで…… ちょっと悶えそうなんですが(苦笑)。
表紙や挿絵を描かれている 織澤あきふみさん がビジュアル面で補ったという部分も大きいかと思いますね。
猫子については逆に、余り好みでない記号的要素の調合品と言った印象。
ただし歩く爆弾という発想とそれに付属する設定(自爆しても記憶を新しい機体に移すからすぐに復活。『エヴァンゲリオン』の綾波みたいですが(苦笑))は、今作中でも数少ない斬新なポイントだとは思いましたけどね。しかしこれについては主人公・巽と同じ心境ですが(苦笑)。
この織澤あきふみさんはユニゾンシフト の『WAGA魔々かぷりちお』で原画をされている方です。
ユニゾンシフトと言うと「いとうのいぢさん」。いとうのいぢさんというと『涼宮ハルヒ』シリーズ。という事なので、もしかするとのいぢさん辺りのご紹介で今回描かれたのかもしれません(推測)。
(12/13 1:40)
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