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2008年7月 8日 (火)

『ハザール事典』『サラゴサ手稿』翻訳者・工藤幸雄氏死去

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第一線で活躍中の翻訳者にインタビュー:翻訳家 工藤幸雄さん (英語トランス)

工藤幸雄 - Wikipedia
※ミロラド・パヴィチの『ハザール事典 夢の狩人たちの物語』を翻訳された工藤幸雄氏が亡くなられたと、 ついさっき(仕事で遅くなった)夕食を食べながら読んだ新聞記事で知りました。

 世間的にはかなりマイナーな存在だと思いますが、 工藤幸雄という方は上記の作品の他、 ポーランドの作家ヤン・ポトツキの作品『サラゴサ手稿』の翻訳も手掛けた方として自分は記憶してます。

『サラゴサ手稿』は『世界幻想文学大系』(国書刊行会)に収録された「第十四日目」まで読んでましたので、 そのより先の「六十六日目」の翻訳を10年来待ってたのですが……。 もうこれについては遺稿の中から見つかる事を祈るほかありません (何か機会あれば英語版を探すしかないかも)。自分が初めて意識して読んだ幻想文学はこれでしたね。

『ハザール事典』は大学進学で福岡に出た頃に、 雑誌の書評の紹介を読んでから本屋で探し出してたかと思います。
 進学した年が1995年だからちょうどユーゴ内戦の終結した年です。 冷戦の終了からソ連・東欧のドミノ倒しのような崩壊をニュースで目にした高校時代。 その最後の混乱がユーゴ内戦。
 この本は旧ユーゴのセルビア人作家・パヴィチ氏が内戦前に書かれたもので、 3つの宗教について3つの時代が描かれてます。 3つの宗教とはキリスト教・イスラム教・ユダヤ教です。 『ハザール』についての百科事典を取りまとめるはずが、 これらの宗教を背景とした者が協力し、妨害し、争うなどしてしまい、 結局、その事典は散逸してしまう。本書は散逸した断片を引用し、 それに関わったという人物伝を加えるなどするなどして再構築されている、とされてます。
 この本の背景についてはユーゴの内情とも絡むと思っていたので大学時代に書いた批評 「小説後の時代 ポスト・ロマネスクの一提示『ベオグラード書簡』の先見性」 の追文でその事に触れております。
 またこの本がきっかけで過去にあった謎の王国『ハザール可汗国』について色々と関心を持つに至ってます。 大学時代は国際関係論とこの過去の国について調べていたというような感じですな。 その舞台を背景とした物語についてもずっと考えてますし……。

 幻想文学やハザール可汗国への関心のきっかけとなった2つの作品を日本に翻訳・紹介された工藤幸雄さんが亡くなられた事は、 その影響を今も受け続けていると自負する自分としては残念でならないです。

(そいえば、少し前にネットで工藤さんについての紹介記事を読んだ時に初めて、 かなりお年を召されていた事を知り、衝撃を受けた記憶もありますね)

(7/8 0:35)



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