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2010年3月28日 (日)

『BILLY BAT』 世界の歴史の闇を翻弄するコウモリ小僧

※先日発売された『BILLY BAT(3)』は連載中は割と微妙感あった戦国・伊賀編「百地武芸帖」編と、 次の章の冒頭部分(ビリーバット着ぐるみの中の人は……)が収録。
 この「百地武芸帖」編では、ある「巻物」を巡っての非情な死闘が描かれてます。 ザビエルが幼少に見たものを記した「巻物」。ザビエルの死の間際に奪われ日本に渡ったこれが、 WWII戦後にGHQの一部門が探す「古文書」なのかと思いきや。実は戦後にあったそれは一部を記した「写本」だったらしいです。 その「写本」が明智光秀を惑わしたらしいし。微妙どころか結構重要なエピソードでした。
 で、「巻物」は……伊賀のどこかに埋められているそうですが、果たして現在においてもそのままか否か?


※『MASTERキートン』『YAWARA!』『MONSTER』『PLUTO』とウチは20年近く(!)浦沢作品を読み続けてきてます。 その作品は考古学的なテーマなどの中に歴史や世界情勢、政治といった複雑な要素を交えてまして、 例えば『YAWARA!』でさえ、 ユーゴスラビアのザグレブからベオグラードまでタクシーで爆走するエピソードが内戦前の姿であった事や、 テレシコワとその周囲がソ連崩壊の影響を受けた事など、連載当時の世界情勢とは無縁ではありませんでした。
 同じく冷戦末期からソ連崩壊、東欧革命という歴史的変動を後半の舞台背景に描いていた『MASTERキートン』なんかは、 ウチの将来目標を決めた心の教科書的存在でした、目標果たせなかったけどな(w)。
 ちなみに『20世紀少年』だけは初動から見てなかったのでノーチェックだったりします。何かの機会に読んではみたい。


※『BILLY BAT』は『PLUTO』終盤辺りから始まった連載モノです。3巻まで出てますけど、 一見関連性の見えない様々な時代がシャッフルされ描かれている為に、何がなんだかすんなりと判らなかったりします。 3巻発売で切りがいいって言うわけではありませんが、 どうなっているのか現状把握をウチがしたいので、ここ数日ほど色々とメモって見ました (書きまとめるのに2晩掛かってるんですよ)。


※時代と場面が複雑に絡み合った『BILLY BAT』は、時代ごとに分けると大体こんな感じでしょうか。
◆【1世紀頃のパレスチナ】
メシアがある男に描いて見せた「コウモリ(白)」と、 その男と出会った少年ユダ(別人)が描く「コウモリ(白)」(は同じ物?)。少年ユダが相手をする2人の「コウモリ(黒)」。 ユダの描いた「コウモリ(白)」を描いたイエス・キリスト。しかしそれはユダの頭の中に浮かんだ物に過ぎなかった。

◆【戦国時代】
 2巻でイエス・キリストの弟子ユダを迷わした「コウモリ」が、16世紀にスペイン(ピレネー山地)の洞窟で少年ザビエルの目の前に現われ(3巻)、 ザビエルが「巻物(黒)」に描いて東洋に持ち込む。 ヤジローがザビエルから奪って日本に持ち込んだ「巻物」は伊賀の忍者に渡る。
 伊賀の3家(百地家・服部家・もう1族は福地家?)の間で(一部だけ)写された「写本(黒)」が服部家に、「巻物」は百地家に。 「巻物」は争奪戦の果てに(紀伊の百地家に届ける命を受けていた)勘兵衛によって伊賀のどこかに埋められ、「写本」の方は服部家から誰かに渡る途中に明智光秀の手に落ちてしまう。

◆【第二次大戦後 1949年】
 東京の路地裏に描かれた「コウモリ(白)」。知らず知らずのうちに「蝙蝠小僧(黒)」を主人公に漫画を描いていた日系人ケヴィン・ヤマガタ。 GHQ戦略諜報局に集められた古文書の中に埋もれた「写本(黒)」。日本で「蝙蝠小僧(黒)」を描く謎の漫画家・唐麻雑風。
「コウモリは白か黒か」を問う謎の日本人・来栖、「コウモリの古文書」を探すアメリカ人ファニー大尉。下山事件・三鷹事件。

◆【1959年のニューヨーク】
 日系人タクシー運転手ランディ・モモチ(!)。ゴールデンコーラのオーナーの息子(白人)と黒人のカップル。 フルシチョフがいる時代。アメリカ人の描く「ビリーバット(黒)」と「ビリーランド」

◆【JFK】
「ビリーランド」で働いていたオズワルド。ケネディ(⇒フルシチョフ⇒キューバ危機)。月探査。

 浦沢直樹のシリアスミステリー物『MASTERキートン』『MONSTER』『PLUTO』などでは、 謎の断片を散りばめる手法が思いっ切り使われてて読者を大きく悩ませた(推理させた)のです。 そしてこの『BILLY BAT』もまた、バラバラな情報が拡散したままなので、どこでどう繋がるのか着地点が全く見えません(苦笑)。

「コウモリ」の行方は戦国時代の伊賀でどうなってしまったのかを整理してみると、 「巻物」は勘兵衛に埋められ失われたかに見えたけど、 実は「写本」が抜け目の無い服部家の2代目半蔵によって作られていた事が判ってます。 部分的に写された「写本」は誰かに届けられる途中に明智光秀の手に落ちてますが、その滅亡後もどこかに存在し続け、 それがあのGHQ戦略諜報局に埋もれていた「古文書」。
 また「巻物」も失われたと見せかけて半蔵に埋められる現場を目撃されてます。つまり、 いつでも手にする事が出来る位置にあるという事。 しかしながら情報量が多過ぎる(コウモリに惑わされる)と半蔵は理解しているのだから放置してます。
「巻物」がその後にどうなってしまったのか、今後のエピソードで再び存在を示すのかもしれないですね。


 イエスの死、信長の死とその後、三鷹事件・松川事件。これらは予言か「コウモリ」の書いたシナリオか。

「コウモリ」を探す理由は、未来を知って世界を支配しようとする為。
「コウモリ」を隠す理由は、蝙蝠が描き従わせる未来の設計図に抗う為。
 大体の構図はそれぞれの目的を果たそうとする者たちのグループがある事でしょう。 興味から「コウモリ」を調べようとする者、 そして「コウモリ」を描く者もいますが、それらもいずれかのグループに至るかと。

 もちろん脇役に留まるかも判らないキャラクターも多いですけどね。 あの白人・黒人カップルは「白か黒か」との問いに対する答えの一つなのか? それとも別の暗示を担うのか?  日系人モモチと戦国時代の百地家、戦国時代とニューヨークを結び付ける意味とか?


 今連載の章ではオズワルドが登場してます。そうあのJFK暗殺犯だとされる人物です。 オズワルドはあの来栖とも接触しているだけでなく「コウモリ」の幻惑にも捉われている模様。 「コウモリ小僧」はこの時代に何を起こそうとするのか(表の裏で)、次の巻ではどこまで踏み込むんだろ?

(2010年3月28日 1:00)



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