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2015年9月 2日 (水)

キャンディアイランドの冒険(仮)

※8月後半に急に思い立って少しずつ携帯に打ち込んでました『シンデレラガールズ』のSS、仮公開する所が適当に無かったので、こちらに一時的にUPします。
 まだ手直しする所とか色々とありますので、完成版では仕様が変わる予定です。

 あと、9月に宮島に行きたい……。

     ◆ ◆ ◆

「秋の宮島・岩国 紅葉めぐり」

 そんなテレビ番組の企画が緒方智絵里と双葉杏、三村かな子による新参アイドルユニット・キャンディアイランドに舞い込んできたのは、外の空気が夏の暑さからすっかり入れ替わった十月の始め頃の事だった。

「本当に、そんなお仕事をいただけるんですか」

 周りを壁で囲われた地下に置かれたシンデレラプロジェクトのオフィスで、ソファに小さく座る智絵里は目を見開き未だ信じられない表情をみせながら、プロデューサーの顔を伺うように聞き返していた。
「はい、本当です」
 テーブルを挟んだ目の前に座るプロデューサーは、大柄な身体ではっきりと、けれども数ヶ月前と違い堅さの抜けた優しい顔でうなずく。
「緒方さんと三村さん、そして双葉さんに出演していただきたいと、番組ディレクターの方から直々に依頼が着ています」
「良かったね、また三人みんなでお仕事できるんだね~」
「うん、そうだね、かな子ちゃん」
「杏は面倒だから遠くになんて行きたくないなぁ。おとなしく留守番して二人のお土産を待ってるよ」
「ダメだよ杏ちゃん。せっかくのお仕事なんだから」
「もちろん冗談だよ、かな子ちゃん」

「ではこちらを」
 プロデューサーはそう言いながら、分厚い書類の封筒をガラスのテーブルに差し出していた。
 ずっしりとした厚さと重みにかな子は息を呑み、智絵里は少し怯えてしまう。
「この中には、依頼された番組の内容とお仕事の資料、それから宮島の観光ガイドの本などが参考で入っているそうです」
 いつも通りに書類を指し示して説明していたプロデューサー。けれども、ふと向かい合う二人に目を向けると、書類の束を見る二人がこわばった表情を見せている事に気付く。
「…ああ、この中に三人分が入ってます」
 すぐさまそう付け加えたが、直も緊張を見せる二人の様子に、首の後ろに手を回してしまう。これはプロデューサーの癖みたいなものだ。

 困惑の滞った空気が事務所を漂う。
「……ねえ」
 とにかく見てみようよと、杏が直ぐ様助け舟を出そうとしたが、それよりも先に、プロデューサーは手持ちのカバンから一通の小さな封筒を手にして、厚い書類の上に重ねてきた。
「お二人にはこちらもあります」
 そう差し出された封筒は仕事の書類とは異なり可愛らしい小さな手紙だった。
 さっきまで堅い表情だった智絵里とかな子もこじんまりとしたそれを不思議そうに見つめる。
「開けて見せてよ、智絵里ちゃん」
 杏は急かすようにさっさと手紙を手にすると、智絵里の手元に押しつける。
「えっと、うん」
 裏に貼られた花柄シールの封を丁寧に剥がし、中の手紙を引き出した。
「あ、幸子ちゃんからだ」
 輿水幸子とは、今年の夏に智絵里たち三人が初めてテレビに出演した時にライバルチームKBYD(可愛い僕と野球どすえ)として出会って以来、一緒にバンジージャンプの収録をしたり、サマーフェスティバルなどでよく顔を合わせる事から、時々メールや電話をやりとりしたりするぐらい親しくなっていた。 特にひと月程前には、柴又での江戸切子の取材収録で智絵里とかな子が緊張の余りトラブルに見舞われた際には、偶々別番組収録で柴又にいたKBYDの幸子は、二人に力強いアドバイスを送ってくれたりもしている。

「なんて書いてあるの、智絵里ちゃん?」
「あ、このお仕事は幸子ちゃん達からきていたんだ」

 可愛い僕から甘い甘いキャンディアイランドのみなさんにすてきなプレゼントです。
僕たちのお仕事を半分あげるんだから甘い甘い小さなお菓子を3コだけくれるくらい感謝してくださいよ!

 もう一枚のお手紙は、同じくKBYDの小早川紗枝からだった。彼女の普段からの和服姿らしく、いつもの京言葉のようなメッセージがつづられていた。

 幸子はんは感謝しいとかそないな風に言いてはりますけど、本当はたいへん感謝してますのは私たちの方なんどすえ。実はな、この仕事は余りに急な依頼よって、私らでは手が全然足りんかったんよ。だからこの依頼を受けてくれたら私たちもホンマに助かりますわ
もし分からない事があったら、いつでも電話で相談してきてぇな

「いつもお話してるから余り気付かないけど、紗枝ちゃんって不思議な言葉を使ってるね
うん、そうだね…あれ、これって?」
「この前みたいに全身全力渾身の直球でがんばれ~って、これは……」
「きっと姫川ちゃんだね」

「と言うことは、このお仕事って、野球どすえのみんなからのおすそわけなんだね」
「まあ確かにそうですが、これはちょうど良いチャレンジだと思います。みなさんはどうでしょうか」

「プロデューサー、その収録はいつなの?」
「来週の土日です。みなさんには金曜の夕方過ぎに新幹線で向かってもらいます。そして日曜の夜には東京に戻る予定です」

 そういうとテーブルに置かれたままだった書類の封筒を指し示して促す。
「詳しい事は、こちらの資料にも目を通して下さい。何かを分からない事があれば、私に訊いていただいても構いません」

「二人とも、さっさと読んじゃおうよ」
 杏はそういいながら封筒を開けて書類やガイドブック等を三人に分ける。

「一応確認ですが、泊まりがけで遠くへ行くようなお仕事は本当に大丈夫でしょうか?」

 これはシンデレラプロジェクトへの所属契約をする際にも既に確認しており、更には保護者の同意も得てと合わせて既に確認している事ではあったが、大事な事でもあるので、改めて確認したのだ

「お仕事なら私は大丈夫です。いつかはそんな事もあるかなって両親とも話してましたから。二人ともシンデレラプロジェクトとプロデューサーさんを信頼してますから、だから大丈夫です」
「私も…です。お家に帰って伝言残していれば、大丈夫かなって。それに、もっとがんばったら新しい事を見付けられるかもしれないから。でも、露天風呂のような撮影は…ううん、何でもします!」
「あ、安心して下さい。今回はそのような撮影はありません!」

「まあ、この三人にはちょっと早いよね」
「早いかどうかではなく、本当にチャレンジしたいかどうかです。だから無理はしないで下さい、緒方さん」

「杏ちゃんは?」
「二人が行くなら仕方がないか~。杏も多分、ついて行くよ。どうせ、杏の家は放置主義だし」

 三人三様の答えにプロデューサーは強く頷き、ありがとうございます、と答える。

「お仕事で遠くに行くなんて、楽しみだね」
「うん、旅行みたいな事なんてほとんどした事がないから、私もみんなで行けるなんて…」
 と、ここでふと、智絵里が気付く。
「あの、プロデューサーさんも私たちに付き添ってくれるのですか?」
 智絵里の問いにプロデューサーはまた首の裏に手を添える。
「実は、他のユニットの仕事がありますから、一緒には行けません。申し訳ないです」
「そう、ですか」
「ただ、凸レーションのみなさんがその日曜に広島で握手会を催します。その時にみなさんの所に向かいますから、そこで落ち合えればと」
 そう言って差し出されたプロデューサーのスケジュール帳には凸レーションの予定か記されてあった。
「きらりちゃんたちも来るんだ~」
 両手を合わせて喜ぶかな子、それに対して杏は
「え~きらりも後から来るの~」
 と、少々過保護気味な親友諸星きらりの名前にわざとらしいくらいうんざりした顔を見せる。

「もちろんあちらの番組スタッフには、女性の方を付き添いにするよう強くお願いしてます。それに…とにかくご安心下さい」
「はい、是非ともお願いします」
 代わりにサポートしてくれる相手が誰なのかは、智絵里とかな子にとっては切実な事だから、プロデューサーも任せて下さいと言葉を重ねる。
 しかし杏だけはスケジュールボードを何故か眺めていた。

「あともう一つ、双葉さん、よろしいですか」
「なに、プロデューサー?」
「確か金曜の夕方は『とときら学園』の「あんきランキング」収録がありますが、間に合いそうでしょうか? 今回は唯一、それだけが心配でしたので」
「あ~そういえば。あったねぇ、そんな仕事」
「双葉さんと諸星さんお二人の大切なお仕事です」
「その収録、プロデューサーも確か来るんだったよね」
「はい」
「なら、送迎よろしく」
「わかりました、お任せ下さい」

 熱心に書類や資料に目を通した智絵里とかな子。杏はサラッとだけ。そしていくつかの質問をやりとりした後、

「この番組のお仕事に向けて、みなさん頑張ってください」
「はい」「はい、がんばります」
「うん、まぁ適当にがんばるよ」

 こうしてキャンディアイランドは新たな仕事に挑むこととなったのです。

     ◆ ◆ ◆

「今はどの辺りなの? 杏ちゃん」
 スマホの向こうからは、駅の喧騒をバックにかな子の心配そうな声が聞こえてくる。
「ええっと~まだ大きな川の橋の真ん中だよ」
 杏はスマホを耳にあてたまま、窓越しに周りを見渡すが、杏の隣にくっついていた諸星きらりがスマホに顔を寄せて代わりに教えてくれた。
「杏ちゃん、荒川の笹目橋って看板があったよ」
「そうそう、そんなとこ。ほんとモ~! さっきから全然動いてないよ!」
 狭い車内に一時間近く閉じ込められていたから、それでなくても気だるい杏は本当にうんざりとしていた。
「本当に申し訳ないです。自分の見通しが甘かったばかりに」
「ああ~、だからプロデューサーは悪くないってば」
 杏の愚痴に、運転席でハンドルを握るプロデューサーがすぐさま謝るが、杏はそれを慌てて押し留めようとした。

『とときら学園』の「あんきランキング」を収録した双葉杏と諸星きらり、そして付き添いのプロデューサーは埼玉方面から急ぎ東京駅へとプロダクションの車で目指していた。
 新幹線で直接東京駅に向かう事を提案したプロデューサーに、人混みが苦手な杏が車での移動を希望したのだ。
 けれども県境を跨ぐ橋の途中でノロノロの大渋滞に巻き込まれてしまった。

「Pちゃん、暫く下の道路にも降りられないって言ってるから、間に合いそうにないんだって」
 杏に代わり、スマートフォンに出たきらりが告げる。
「杏はもう間に合わないから、二人でがんばってよ」
「ダメだよ杏ちゃん。せっかくのお仕事なんだから! Pちゃんも絶対ぜぇ~ったい間に合うようがんばるって言ってたから、二人とも安心して~」

 東京駅八重洲口の改札口前。

「だそうです、ちひろさん」
 通話を切ったかな子は困った顔を智絵里と、自分たちをサポートしてくれる千川ちひろに見せてしまう。

「これは困りましたね…。仕方ないですから、お二人は夕御飯のお弁当を買ってそちらで待ってて下さい。私はみどりの窓口に指定席の券をとってきますから」

「はい、分かりました。智絵里ちゃん、行こ?」
「う、うん、かな子ちゃん。あ…そっちはデザートのお店しか」
「だってせっかくここに着たんだから、美味しいデザートも欲しいもんね。それに長旅だからお弁当だけじゃ足らないと思うよ~」
「わ、私はお弁当だけでも一杯になりそう」

 この後、「食べ過ぎです!」と言う千川ちひろとの攻防戦の末、ケーキ4個入りのデザート一箱以外は没収されるという一幕もありましたが、ちひろに新幹線ホームで見送られながら、東京から宮島のある広島に向けて、智絵里とかな子は向かったのでした。

「ふたりだけで知らない所に行くなんて、ほんとうに大丈夫なのかな?」
 やっと首都高から降りてからも渋滞に巻き込まれた車の中で、杏を抱きかかえながらきらりが静かに尋ねる。黄昏時を過ぎ真っ暗になった車内を時折外からのライトが方々を貫くが、それに照らされる程度では、きらりの寂しい気分は晴れない。時刻は東京駅到着予定を大きく過ぎ去ってしまっていた。
「きらり、余り抱き締めないでって」
「うん、ごめんね、杏ちゃん」
 むずがる杏に力を緩めたきらりは、代わりに杏の頭に顔を埋める。
「まああの二人なら心配しなくてもいいと思うよ。だってほら」
 杏は自分のスケジュール帳を開き、小さな指で指し示す。
「これがどうしたの?」
 杏のスケジュール帳にある予定表には、たくさんの花柄など散りばめられているが、全てきらりが書いたもの。だから見慣れたページを見せられても、きらりには杏の意図がちょっと分からない。
「ま、これってつまりはプロデューサーとのサプライズって事だよね?」
 まだ運転に集中しているプロデューサーを気遣い、小さな声で杏はきらりにささやいた。

     ◆ ◆ ◆

 広島駅に到着したのは夜遅くでした。
 それでもたくさんの人たちが行き交う中、持ち慣れない旅行バックを手に、智絵里とかな子の二人はエスカレーターでホームを降りていました。

「智絵里ちゃん、本当に大丈夫?」
「うん、……多分」
 指定の二人席に数時間とは言え、ずっと座ったままの慣れない長旅。更には狭い車内で外が闇夜という閉塞感に、智絵里は途中から乗り物酔いとなり、最後の長いトンネルを抜けて広島に近づくアナウンスがあるまで席でグッタリしていたのでした。
 目覚めたばかりで調子もまだ取り戻せてはないけれども、それでも旅行バックを抱えて改札口に真っ直ぐ二人は向かいます。

「智絵里ちゃん、かな子ちゃん、長旅お疲れ様」
 改札を抜けて、そこで待ち構えているという女性スタッフを探し始めようとした二人は、急に呼び掛けられ慌てて振り向く。
「あれ、どうしてここに?」
「わぁ…」
 二人を待っていたのは、思いがけない出迎えでした。

 ※9月4日昼に加筆修正

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