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2023年1月13日 (金)

エールエールA館への移転に明確に反対します。(広島市中央図書館建替問題)

 今現在、老朽化などで現地で建て替える事になった中央図書館の案件が、広島市側で急に赤字が続くと言う広島駅前のエールエールA館(駅前福屋)に移転する案に話が差し替えられ、強行的に採用を謀ろうとしている問題が生じています。

 昨今、外観はデザイン的に見栄えする形(日焼け対策なし)である一方、ただコスト的な効率化や古い資料の廃棄、更に言えば本を所蔵保存し閲覧すると言う観点が抜けていると言う質の共わない図書館が議論に上がる事が幾つかありました。それと対照的に、図書館としての機能を重視し拡大させる形で新しくなった図書館も幾つか話題となっていました。図書館に対する姿勢は都市としての文化や知育に対する姿勢でもあります。とりあえず建物があってとりあえず所蔵できる適当な場所を確保してとりあえずそれで運営していく、そのような適当さでは、所蔵品の安全かつ永続的な保存も利便性の高い機能性の担保も運用もままならない筈です。ついでに言えば、紙の書物を扱うのですから、完全な耐火性耐水性を含めた保管設備も求められることは当然です。
 2019年10月、約23万点を収蔵する博物館兼美術館「川崎市市民ミュージアム」の収蔵庫が台風に伴う増水で浸水しかなり多数の収蔵物が水没しました。このように文化財の収蔵設備もいつ何が起こるか予想できません。だからこそ万が一に備えてリスクを除いた保管設備が求められるのです。
 エールエールA館では、図書館機能移設後も、その真上には飲食店街が残り、その地下には生鮮食料品を扱うフロアが残ります。所蔵についても図書館フロア以外の各フロアの角地に分散させて(ただ単なる数合わせのように)配置するとのことです。これで本当に図書館としての機能を保てるのでしょうか。

 広島は他に例を洩れることなく(牛田山などに貝塚があった)太古から平野部が海だった時代、そして有史時代から藩政時代や近代までの長きに渡る地域の歴史を抱えています。加えて、大戦時の人類最初の核被爆により疎開準備中だった多くの資料などを喪失するという経験、そして惨禍を記憶継承する数多くの被爆記録を残しているのです。
 もちろん歴史文化の他にも生活や社会経済や科学技術、環境、文学など数多く文献も過去から現在、未来と収蔵され続けなくてはいけません。
 図書館とはそういったあらゆる知識と記録を集約させる器であり、今後数百年も受け継がねばならない宝物庫なのです。

 以上の意見より、広島市中央図書館の建て替え候補地として駅前のエールエールA館は極めて不適切であり、現地点もしくはその近隣で、機能性と拡張性と保全性を持った広島市を代表する文化施設としての総合図書館の建て替えを進言します。
 
 それでももし駅前にこだわるのであれば、建物自体を総合的で機能性保存性拡張性を持った図書館として基礎から建て替える案を出すべきだったでしょう。

 あと、ついでに言えば……それでなくても広島市内での書店が減少しているのに、市内有数の大規模書店であるジュンク堂広島駅前店を追放する形で図書館を据え置こうとする発想に、文化の衰退を感じざるを得ないです(この議論に踏み込み図書館の駅前移転に反対したそもそものきっかけがこの件でした)。

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